プロダクト / 技術 2024.07.11

【インタビュー】当社CTOが考える生成AIの課題と未来構想

【インタビュー】当社CTOが考える生成AIの課題と未来構想

こんにちは!People Success部 Talent Attraction & Acquisition G 採用担当の水澤です。
今回は、昨今話題の「生成AI」をテーマに取り上げます!

近年、世界中で注目を集めている「生成AI」。文章生成、画像生成、動画生成、音声生成など、多種多様な生成AIが開発され、ビジネスや我々の日常生活の中で活用され始めています。今年5月にOpenAI社が、新型AI「GPT-4o」を発表したことをきっかけに、テレビやSNS等で、AIをテーマにしたコンテンツがより増えたのではないでしょうか。
また、当社の新卒採用担当が、多くの学生さんとお話をする中で、「ウイングアーク1stでは生成AIを活用したビジネスを考えているのか?」といった質問をいただくこともあり、AIに関心を持っている方が増えてきたなという印象です。

ということで今回、ウイングアーク1stが生成AI に対してどんな向き合い方をしているのか、ぜひ皆さんに知っていただきたく、当社CTO島澤に「生成AI」をテーマとしたインタビューを実施してまいりました!
島澤より、生成AIそのものに対する考え、そして、ウイングアーク1stが生成AIをどう活用していくのか、興味深いお話を聞いてまいりましたので、ぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。

※記事末尾にインタビュー動画を掲載しております。ぜひご視聴ください。
※編集の都合上、発話内容の表現や順序を一部修正した箇所がございます。 

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取締役執行役員事業統括担当 兼 CTO 島澤 甲
<経歴> 1981年東京生まれ。大学時代にはスーパーコンピュータを駆使した遺伝子解析に打ち込み、遺伝子操作プログラムで特許を取得する。SIerにて大手企業向け生産管理パッケージシステムの開発を経験したのち、ベンチャー企業に転職。自ら高品質パッケージ製品を開発し、営業から開発まで幅広く取り組む。2010年にウイングアーク(現ウイングアーク1st)に入社後は製品開発をメインに手掛け、2016年にウイングアーク1st執行役員CTOに就任。2021年 取締役 執行役員事業統括担当 兼 CTOに就任、現在に至る。

生成AIの何が革新的なのか?

――最近、ChatGPTや生成AIが注目を浴びているかと思います。これまでも様々な技術革新が行われてきた中で、特に生成AIはすごいと言われていると思うのですが、改めて、何がそんなに革新的なイノベーションなのでしょうか。

島澤:そうですね。非常にいろんな意見が出ているテーマなので、私からの独特な切り口でお伝えしたいな思います。まず、IT業界における技術的な大きな転換点は、細かく見るといっぱいあるのですが、大きなところでいうと三つあるかなと思っています。

一つ目がインターネット、二つ目がスマートフォン、そして三つ目が、LLM・生成AIの登場だと私は捉えていて、そのくらいインパクトがあると考えています。
これはあくまでも私の意見ですが、これら三つの共通項は、最終的な成果や、どのくらいのポテンシャルをもっているのかを、設計者が想像しきれていない点なのではないかと思っています。

例えば、インターネットにおいて、YouTubeやSNSの存在により、個人が大手メディアを上回る発信力を持つようになったことは、当時なかなか想像できなかったと思います。スマートフォンなんてそれこそ、音楽、映画、写真、Spotify、Netflix、Instagramなど、皆さんスマートフォン上で様々なメディアに触れているのではないかと思います。私みたいにデッキのCDプレイヤーを持っている人なんて、今はもうマイノリティだと思うんですよね(笑)

このような形でスマートフォンが登場して、本当に世の中の在り方が変わったと思います。同じように、LLMも能力限界が見えていない、私はそういうテーマだと思っていて、これがLLMに注力すべき背景なのではないかと思っています。
ちなみに、こういった大きなテーマにおいて、何かしら具現化できた企業は、非常に大きく成長します。やはりこのLLMをどう具現化するかが、我々の腕の見せどころでもあるのかなと思っています。

生成AIの課題 ~お客様は生成AIを使いたいのか?

――「生成AIはすごい」と言われている一方で、島澤さんが考える生成AIの課題は何だと思いますか

島澤:まず「私達の顧客は生成AIを使いたいのか?」という点が、私は大きな課題だと思っています。
例えば、スマートフォン。我々はスマートフォンを触ることが目的になっていますでしょうか?「この肌触りがたまらないんです」、「この新しいカメラがたまらないんです」といった触り方をしていないですよね。スマートフォンを触ることが”目的”なのではなく、SNSやインターネット、カメラなどを利用するために、スマートフォンを”手段”として活用している人が多いと思います。つまり、手段の先に、(技術を利用する)目的が必ずあると思うんですよね。

スマートフォンが出た当時は、「ボタンのない携帯電話なんて受け入れられるわけないだろう」と言っていた方がいましたけれども、今どうなっているかは、改めていうまでもないことかなと思います。
なので、やはり生成AIというテーマも、スマートフォン登場の初期と同じような状態にあるのかなと思います。改めて「顧客は生成AIに今すごく振り回されている」と思うんですよ。ここが大きな課題というか、出だしの技術の定番的な展開なのかなと思います。

ウイングアーク1st×生成AI

――では、ウイングアーク1stが生成AIをどのように活用しているのか、どういった向き合い方をしているのかについて、教えてください。

島澤:そうですね、改めて、私達のコアコンピタンスは一体何なのかに関わってくると思います。私達はソフトウェアを提供する会社として、やはりお客様をいかに楽にできるかが大事であると考えていて、お客様の業務に役立ってこそ私達の存在意義があると思うんですよね。

例えば、建設業のお客様を例に考えると、実際にお客様がやりたいことは、現場の写真や、モノの情報、現場の看板の情報、担当者の情報、位置情報、こういったものを複合して、レポートを自動生成したり、進捗工程をリアルタイムで把握して問題が発生する前に手を打ったり、そういうことだと思うんですよね。

私もこの業界長いですけれども、やはりコンピューターの世界において、いくつか不可能が可能になったブレークスルーがあったと思います。先日の「GPT-4o」がすごく特徴的ではあったのですが、生成AIをお客様に意識させずに裏側で使える領域が、明確に出てきたわけです。

だいぶテッキーな話になってきますけれども、例えば「生成AIにこれをやってもらうためには、プロンプトエンジニアリングが~」とか、そういうことをお客様に意識させるのは結構遠いと思うんですよ。
プロンプトを書くことはプログラミングに近いので、例えば「直接Pythonを書ける領域を用意しました。自由度が高く何でもできますよ」とお客様に私達の製品を提案しても、なかなか受け入れられないと思います。

プロンプトエンジニアリングも含め、専門的な領域を意識させずに、お客様の実現したいことを実現できるような製品を届けることが、私はすごく重要だと思っています。つまり、お客様がやりたいことを実現している裏側で、「知らないうちに生成AIを使っていた」という顧客体験を創ることや、過去にできなかったことを実現することが、我々の存在意義、コアコンピタンスであると考えています。

生成AIに対する未来構想

――それでは最後に、今後ウイングアークが生成AIとどう関わっていくのか、将来の予測やビジョンについて教えてください。

島澤:そうですね、私もエンジニア人生長くやってますけれども、この生成AIに関して言うと、「Transformer」が発明されたとき、Googleさんが論文を出されていて、私もそれを見ていたんですよね。旧来のディープラーニングだと、学ばせまくるとバカになるみたいな感覚があったのですが、その論文では、急激に認識率が上がるという内容が書かれていて、本当に驚かされましたね。私にはスマートフォンの登場よりも遥かにびっくりしたテーマです。

そのときに思ったことなのですが、IT業界って結構バズワードがあるんですよ。なんというか、騒ぐためのキーワードというんですかね。でも私は生成AIに関して、大げさな言い方をすると、人類のコンピューティングのあり方を変え得るポテンシャルを秘めているなと思います。

生成AIを使っている人は、「画像が生成できた」とか、「音楽が生成できた」とか、「うちの嫁さんが3Dで動き出した」などと発信されていますが、どちらかというと、生成AIはまだ、テクノロジーを趣味としているような方のところに留まっているのかなという感覚があります。

スマートフォンは本当に誰でも持っているじゃないですか。それに比べると、(生成AIは)スマートフォンのポジションにはまだ全然来ていないと思うんですよ。
なので、スマートフォンを触るときに「私は今触っている」という意識を持たないように、生成AIも、存在を意識せず、呼吸するかのごとく使えるようになることが理想だと思います。

スマートフォンが出た当時、魅力的なアプリケーションがそんなになくて、“ちょっと使いにくい電話“くらいで使い始めた人とかもいると思うんですよね。
「ちょっとネットが見やすくなったな」ぐらいのところからスタートしたと思うんですが、その後、スマートフォン上でいろんなことを実現していったメーカー、技術者がいるからこそ、今日を迎えていると私は思っています。

ですから、生成AIというテーマで、ウイングアークが成し遂げるべきことは、生成AIを意識しないフロントのアプリケーションをいかに作り込んでいけるかだと思います。お客様には純粋に「なんか最近、パソコンが使いやすくなったね」くらいに思ってもらうこと、それが私達のゴールなのではないかと思います。

――ありがとうございます。改めて冒頭のお話にあったように、生成AIは「目的」ではなく「手段」であるということ、そしてお客様には生成AIを使っていること意識させずに、「なんだか最近、業務効率が良くなったり、生活が豊かになったよね」くらいに思ってもらうことがゴールである、ということですね。

島澤:そうですね。(生成AIの登場によって)出来ないことが出来るようになったことは間違いないと思うので、それをぜひユーザーに体感してほしいなと思います。

――島澤さん、貴重なお話ありがとうございました。

島澤:こちらこそありがとうございました。

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▼インタビュー動画はこちら

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