インタビュー 2024.05.08

企業もスポーツも農園もDXする! ユニークなR&Dで攻めるウイングアーク1stの強みとは

企業もスポーツも農園もDXする! ユニークなR&Dで攻めるウイングアーク1stの強みとは

ITは道具であり、人の役に立ってこそ価値がある――そう語るのは、企業のDX推進をトータルサポートするウイングアーク1stの島澤CTO(最高技術責任者)。2021年にプライム市場(旧東証一部)上場を果たした同社の業界における立ち位置やユニークなR&D、若手エンジニアの活躍やキャリアについて、異色の経歴を持つ同氏のIT業界への想いと併せて伺った。大学での研究内容や学びをビジネスに活かすチャンスについても必見だ。

インタビュイー:島澤 甲  取締役執行役員事業統括担当 兼 CTO
大学時代にはスーパーコンピュータを駆使した遺伝子解析に打ち込み、遺伝子操作プログラムで在学中に特許を取得。SIerにて大手企業向け生産管理パッケージシステムの開発を経験したのち、ベンチャー企業に転職。自ら高品質パッケージ製品を開発し、営業から開発まで幅広く取り組む。2016年にウイングアーク1st執行役員CTOに就任。最近の趣味は機械工作、金属加工。毎年開催される自社主催のプライベートカンファレンスでは、製品を活用したデモを”手作り”し、会場を沸かせている。

「人の役に立つ」ための開発がしたかった

――学生時代からウイングアーク1st入社に至るまでのキャリアをお聞かせください。

化学分野の出身で、大学では大腸がんの遺伝子解析に取り組んでいました。当時遺伝子の塩基配列パターンなどを目視で確認することがベースだった同領域で、遺伝子操作プログラムを開発して共同特許を取得しました。

実験がとにかく好きで化学を専攻したものの、ITへの興味が尽きず、開発の全行程に携われるITベンチャー企業を中心に就職活動をしていました。

キャリアの軸としたのは、自分の手掛けたプログラムや製品が人の役に立つ仕事。大学在学中に、遺伝子操作プログラムで研究活動の業務効率化をした成功体験をきっかけに、ITは働き方や生き方をも変え得ると気づきました。SIerやベンチャー企業で開発スキルを培ったのち、2008年にウイングアーク1stに入社しました。

――現在はどのような業務を担っていますか?

CTOとして、「市場にどんな価値を届けるか」を考えることが務めです。当社は、単なる仕事のデジタル化ではなく、データを活用してお客さまの企業価値向上を目指しています。

例えば、FAXやEメールなど従来の連絡手段は人の手を要しますよね。人がもっと生産的な業務に従事できるようにするには、データのあり方そのものを変えるデジタル技術や製品設計を検討する必要があります。


「ユーザーのゴール」を第一に考えた製品作りが強み

――業界におけるウイングアーク1stの立ち位置を教えてください。

当社には「帳票・文書管理ソリューション(BD)事業」と「データエンパワーメント(DE)事業」の大きく2つの事業の軸があります。

まず、帳票・文書管理ソリューション(BD)事業が扱うのは、昨今の電子帳簿保存法やインボイス制度の施行によって注目が集まる帳票や文書管理の領域です。現状、業務の一部分を電子化するサービスが多く、お客さまが複数のサービスを組み合わせて使う状況になっています。当社はお客さまの業務全体を包括的にカバーするサービスを開発しています。

次に、データエンパワーメント(DE)事業は、蓄積された会社の情報を分析・加工し、経営や業務に活用するBI領域に関する事業です。

当社は「お客さまごとの業務」にフォーカスし、「データの可視化の先」まで使える製品設計で他社と差別化しています。それは、お客さまのゴールはデータ分析そのものではなく、 分析の先にある課題の解決だからです。例えば工場で起きた異常をリアルタイムに検出、チャットに通知、そして対応記録を残すところまで可能です。こうした開発力で、業界におけるユニークな立ち位置と高い評価を確立しています。

独自のポジション獲得の背景には、幅広い領域での開発チャレンジから得たナレッジの蓄積があります。お客さまの新たな課題解決を考えるときに、必要なナレッジが社内に一通りそろっているという、あまり例のない会社だと思います。

――独自性と開発力を強みとすることで、成長のポテンシャルが高そうです。

他社がやっていないことを実現するスピリッツを持ち、研究開発力を武器に「ウイングアーク1stだからできること」を目指す市場創造型のビジネスです。

当社のビジネスは、テーマごとにR&Dを行い、成果を製品として市場投入し、主力事業になっていくサイクルで成長・拡大しています。約10年前にはR&Dの形でクラウドビジネスを始め、お客さまへ提案し、成功パターンが見えたところでマーケティングやセールスを加速してさらなる拡大を実現しました。

――スポーツ分野でのデータ活用も、興味深いチャレンジですね。

京都府宇治市にオープンした「WingPark1st」は、自転車競技BMXのライダーの動きをデータ分析する世界初の施設となっています。多数のカメラとセンサーを駆使してプロ選手の姿勢や速度などを解析でき、将来的には新技の可能性も追求したいです。

また、プロサッカーチームと連携し、スポーツテックで選手のパフォーマンス向上を目指す挑戦も進行中。具体的な取り組み内容は従業員が企画し、そこに予算を配分する方針で進めています。

人材の市場価値を高めるキャリア制度と環境

――企業として幅広い挑戦を展開中ですが、従業員個人にはどんな挑戦の機会がありますか?

経験値を増やしたい人を後押しすべく、社内公募制度を設け、「社内留学(自らの手上げで、他部門の業務に部分的に取り組む)」「社内転職(自らの手上げで、完全に部門を移る」「社内副業(今の業務はそのままに、社内で立ち上げるプロジェクトに参画する)」などの機会を提供しています。実際に、製品開発と製品運用の部署間では短期交換留学のような形で相互理解を深めています。

私自身、前職では開発から飛び込み営業、法務まで関わったことで視野が広がりました。異なる部署や立場を経験することで、視点やアイデアはより豊かになります。優れた技術の届け方や使われ方まで考えられるような、営業的な発想を持つ技術者の市場価値は非常に高いです。そのための成長機会は絶対に必要だと思っていますね。実際、開発から営業に半年間挑戦して初受注を果たした人もいます。もっともっと、分厚く突出したキャリアを持つ人を育てていきたいですね。

――エンジニアにとってどんなやりがいのある会社でしょうか?

開発の仕事というのは一般的に、情報システムの構築を請け負うSI(システムインテグレーション)と、当社のようなパッケージソフトウェアのISV(独立系ソフトウェアベンダー)の大きく2つがあります。当社は仕様を与えられて開発するのでなく、自分たちで自由に作りたいものを決めて開発をする点が特徴です。

そのため、「こういう手法でお客さまに貢献したい」というエンジニアのイメージを活かせます。若手が考えた提案でも、市場にとって、また顧客にとって価値のあるものなら、会社はその開発に投資をして、追加機能やプロダクトとして世の中に出せる、そういう面白さがあります。

作る内容の自由度だけでなく、技術領域の広さも魅力です。基幹システム(オープン系/ホスト系)、オンプレミス、サブスクリプション、クラウドまで扱います。また、クラウドネイティブな技術開発、品質保証、セキュリティなどもあるので、技術を探求したい人に絶好の環境といえます。

また、上下関係が厳しい環境ではないですが、若手に開発のいろはを丁寧に教える面倒見の良さはあります。マネジメント側は業務背景について「こういう困りごとがあり、こういう方法で解決したい」というロジカルな説明も重視しています。

研究内容もビジネスにつながる可能性

――島澤さんはどんな思いを持って仕事に取り組んでいますか?

メンバーには、「私たちが目指すのはお客さまの成功であり、未来のお客さまのニーズを考えることに、全エネルギーを注ぎたい」という話をします。営業メンバーに、都度お客さまの声を共有してもらい、常に感度高く情報のアンテナを立てていますね。

また、眼前の経営とは一見して無関係に思えるチャレンジも大切にしています。今、CTO室主体で、沖縄の農園をデータドリブンかつ完全リモートで、マンゴーの栽培から収穫までの作業を実施するという画期的な実験を計画中です。

――企業としての未来の展望をお聞かせください。

我々が今注力しているDX領域では、会社と会社をつなぐ「企業間DX」、社内のデータ活用レベルを向上させる「企業内DX」、働く人がデジタルサービスを有効活用できるようにする「人材DX」という3つの軸を持っています。従来、我々はプロダクトの開発やサービス提供が中心でしたが、これから先は、事業の柱をいくつか作って、よりお客さまの課題解決に総合的に応えられる会社にしたいと考えています。

――最後に、理系学生へのメッセージをお願いします。

コンピュータもプログラムも道具であり、人の役に立って初めて価値を発揮します。いくらきれいなフレームワークを書いても、お客さまはソースコードの美しさを買うわけではありません。製品によって人が感じた満足の総量がプログラムの価値だと思います。

実はウイングアーク1stの技術は、誰もが受け取る郵便の不在通知や役所の書類の発行などに広く使われ、皆さんの生活を裏側から支えています。「自分のアイデアやスキルで社会がこんなに良くなった」と誇れる会社です。

自ら開発した製品を提供できるため、技術が好きという思いを社会で活かしたい人にはぜひ、ウイングアーク1stを考えてほしいです。

情報系だけでなく社会課題解決が研究テーマだった人も、課題と技術を結びつけて製品化するなど、研究内容を活かす余地は大いにあります。作るものにリミッターのない当社で、ぜひ業界に功績を残してください。

ライター水田 真梨  カメラマン児玉 聡